解決のための手続は様々です。
まず、弁護士を代理人に立てて、業者と交渉する任意交渉があります。
次に、話し合いを第三者に仲介してもらう手続として、裁判所の調停手続、弁護士会の紛争解決センターでのあっせん仲裁手続、住宅紛争審査会(各地の弁護士会に設置されています)のあっせん調停仲裁手続があります。ただし、住宅紛争審査会の手続は、建設住宅性能評価書が交付された住宅か住宅瑕疵担保責任保険が付された新築住宅であることが必要です。
そして、話し合いが決裂した場合などは裁判という公権力によって解決することが可能です。
①住宅の新築工事、リフォーム工事を「注文」した場合
新築した建物や住宅リフォーム工事に欠陥があった場合、その欠陥が「瑕疵(かし)」にあたるときには、注文者(施主)は建築を請け負った業者に対して、その瑕疵を修補する(直す)ように請求したり、損害の賠償を請求したりすることができます。賠償請求できるのは、瑕疵の修補に必要な費用、修補のための引越し・仮住まいに必要な費用などです。また、瑕疵が重大で建物を建て替えざるを得ない場合には、建て替えに要する費用も請求することができるとされています。
もっとも、建物に「瑕疵」があっても、建物完成後やリフォーム工事完了後に建築請負契約を解除することはできないため、支払済みの代金の返還を請求したり、建物を撤去することを求めたりすることはできません。
② 新築・中古住宅を「購入」した場合
購入した建物に、買主が購入時に通常の注意力をはたらかせても発見できなかった「瑕疵」があった場合、買主は瑕疵によって生じた損害の賠償を求めることができます。ここで賠償を求めることができるのは、その住宅を購入するために支出した調査・鑑定費用や登記費用などです。また、「瑕疵」のためにその住宅を購入した目的が達成できないような場合には、買主は契約を解除し、建物を返して、支払済みの代金の返還を求めることができます。
住宅を購入した場合、通常は修補請求できませんが、購入した住宅が「新築住宅※」の場合で、その住宅の「構造耐力上主要な部分」あるいは「雨水の浸入を防止する部分」に「瑕疵」があるときは、住宅品質確保促進法の特例により、買主は売主に対して修補を請求することもできます。
※「新築住宅」とは、「建設工事完了日から起算して1年以内、かつ、人が住んだことのない住宅」を意味します。
③弁護士費用、慰謝料について
弁護士費用、慰謝料については、請求を認めた裁判例がありますので、請求することが多いです。しかし、請求を否定した裁判例もありますので、常に認められるわけではありません。
損害賠償請求ができる期間は、原則として、引渡しから5年(コンクリート造など強固建物の場合は10年)、瑕疵による滅失・損傷の時から1年です。もっとも、この期間は当事者の合意による短縮が可能とされています。そのため、特約があればそれに従うことになりますし、契約において民間連合協定工事請負契約約款によるとされている場合には、引渡しから1年(コンクリート造などの場合は2年)に短縮されます。
ただし、住宅品質確保促進法の特例により、構造耐力上主要な部分または雨水の浸入を防止する部分に瑕疵がある場合は、引渡しから10年まで請求が可能であり、これについては当事者の合意によっても短縮することができないとされています。
まず、前提として「不具合現象」と「瑕疵」とを区別して考えることが大切です。例えば、扉が開きにくいといった不具合がある場合に、扉が開きにくいこと自体が瑕疵に該当するわけではありません。扉が開きにくくなっている原因が瑕疵に該当するか否かを考えることになります。例えば、扉が開きにくくなっている原因が建物の基礎の傾きであれば、その傾きが「瑕疵」に該当するか否かを考えます。
そして、瑕疵に該当するか否かは、まず当事者の意思を考慮して考えます。建築基準法令による基準を上回る強固な設計が契約書や設計図書等で合意されていれば、たとえ建築基準法令の基準どおりに建築したとしても、合意に反したことをもって「瑕疵」にあたると考えられています。
次に、当事者の意思が明確ではない範囲については、何らかの客観的な基準を用いて「瑕疵」かどうかを判断します。まず、建築基準法令は、最低限の基準を定めているので、客観的な基準にあたります。そのほか、日本建築学会の基準や住宅金融支援機構の仕様書などが客観的な基準として用いられることがあります。
倒産した場合の処理としては、裁判所が関与して法律の手続に従って処理する方法(法的整理)と、裁判所の関与なく私的に倒産処理をする方法(私的整理)があります。法的整理の場合には、個別に訴訟により損害賠償請求することができなくなり、破産等の手続に従って配当を受けることになります。
私的整理の場合は、裁判所の手続に従う必要はありません。
しかし、法的整理の場合でも私的整理の場合でも、倒産した業者は、債務超過に陥っているわけですから、損害の全額を回収することはできないのが通常です。ただし、住宅瑕疵担保履行法により、事業者には住宅瑕疵保険への加入又は保証金の供託が義務付けられており、この保険金又は保証金を受け取ることによって被害の回復を図ることが可能です。
とくに無償にする旨の合意があったと考えられるような場合でない限り、追加工事があれば、その代金を支払う必要があります。
ただし、その代金は業者が一方的に決めることができるわけではありません。代金額について具体的な合意がないときは、相当な価額を支払う合意があったと考えて、裁判所が合理的な金額を定めることになります。
なお、手直し工事だと思っていたら、追加工事費用を請求されたというようなケースの場合は、瑕疵として手直しの必要があったのか否かということになります。手直しの必要があったのであれば、それは瑕疵の修補としての工事であり、追加工事にはあたりません。この場合は、追加工事費用を支払う必要はありません。
住宅のリフォームで、内装や浴室、キッチンの危惧を取り替える、つまり、建物の構造に手を触れない場合には、建築確認は不要です。
増築を伴う場合、10平方メートル以上の増築の場合には建築確認を受けなければなりません。また、10平方メートル未満の増築であっても、防火地域、準防火地域に指定されている地域には、建築確認を受けなければなりません。例えば、名古屋市内ではほとんどの地域が防火地域、準防火地域に指定されています(但し、第一種、第二種低層住居専用地域は除外)。ですから、名古屋市内で増築工事をする場合には、建築確認が必要だと考えた方が無難です。
建築確認を受けなければならない場合、これまで建っている建物が、現在の建築基準法の基準には適合してない場合があります。これを「既存不適格建築物」といいます。既存不適格であっても、既存部分の構造と切り離し、手をつけなければ、増築部分のみについて建築確認を受ければよいのですが、既存部分の構造と一体にするなど、手をつけると、既存部分を含めた建物全体について、建築確認を受けなければならないことになります。
細部については、様々な基準がありますので、建築士に相談してください。
「リフォームだから建築確認はいらない」と考えると、違法建築物になってしまう危険があります。専門家である建築士に相談することが何より大事です。
※構造…主要構造部
工事が予定された最後の工程まで一応終了した場合には、工事が不完全で欠陥があるとしても、建物は完成したものと扱われるとされています。従って、一応は、代金を支払う義務があります、
しかし、もっとも、建物に「瑕疵」にある場合は、瑕疵の修補又は損害賠償がなされるまで、代金の全額の支払いを拒むことができます。
建設会社においては、契約の交渉や締結を担当する営業担当者と、実際に設計施工を担当する現場担当者が異なる場合が多いです。そのため、営業担当者と現場担当者の間で連絡が不十分となり、問題が生ずるケースがあります。
その場合、契約を担当している営業担当者と合意がなされていれば、原則としてその合意は契約の内容となります。ただし、合意が口頭でなされており契約書等の書面が存在しない場合には、裁判においてその合意をどのように立証するか慎重に考える必要があります。
建築請負契約においては、仕事の内容は、契約書、見積書、仕様書、設計図書その他の図面によって特定されます。そのため、その図面により建築請負契約の内容が特定されたと言える場合には、仕事の内容もその図面通りで足りることになります。
打ち合わせの議事録などで、あなたの想定が記録化されていれば、図面が打ち合わせと異なる事を主張できる場合もあります。また、自分の想定と異なった契約がなされたとして、錯誤による契約の無効を主張をすることも考えられますが、重要な要素に該当しない場合や重大な過失がある場合は、契約の無効を主張できませんので、錯誤の主張には慎重な検討が必要です。
工事を実際に行っていた業者に対しては、不法行為に基づく損害賠償請求が可能です。工事を行うに際して、隣地に損害を与えないように注意すべき義務を負っているからです。
これに対して、施主から工事を請け負ったうえで、他の業者に下請けさせていた元請けの業者は、下請人との間に指揮監督関係が存在し、実質的な使用関係が認められる場合に限って、使用者責任として損害賠償責任を負います。
隣地の所有者などの施主についても、工事を業者に請け負わせているので、損害賠償責任を負わないのが原則です。もっとも、施主からの注文又は指図に従って請負人が工事を行った結果、第三者に損害が生じ、注文又は指図について注文者に過失が認められる場合には、例外的に施主に対しても損害賠償請求ができます。
自宅の工事を業者に請け負わせた場合は、業者による工事により隣家に被害を与えたとしても、施主は損害賠償責任を負わないのが原則です。工事を行う方法などは請負人の裁量に委ねられているからです。もっとも、施主からの注文又は指図に従って請負人が工事を行った結果、第三者に損害が生じ、注文又は指図について注文者に過失が認められる場合には、例外的に施主も責任を負います。