ふすまが開かない理由は、地盤沈下だった
Aさんは、地代不払いで、建物収去・土地明け渡し請求訴訟を起こされました。この建物は3年前に建てたばかりのAさんのマイホーム。Aさんは、すでに半年以上地代を支払っていませんでした。
「なぜ地代を支払わなかったの?」。聞いてみると、地主イコールAさんのマイホームを建てた建築業者で、もともとの契約が、建築業者の所有する土地上に借地権を設定し、Aさんがその建築業者に建物建築を依頼するという形の建物建築請負契約でした。建物は住宅ローンを組んで建てたので、建物の建築代金は、すでに住宅ローン会社から直接建築業者に全額支払われていました。ところが、新築のマイホームの居間のふすまが入居後1年くらいから開きにくく、2階のドアも開きにくい、窓に隙間が生じそれが拡大しつつある…。Aさんは建築業者さんに連絡をし、修繕を依頼しました。建築業者が差し向けた大工さんがふすまやドアを調整しましたが、その後ほどなく開きにくくなったため、また修繕を依頼しましたが、今度は来てくれませんでした。Aさんは自分で考えて、地代の支払いを留保することで、修繕を促そうとしたのです。
「被告」という形で裁判が始まったため、まずは、ふすまやドアの擦れた跡や、窓の隙間の写真を裁判所に提出しました。それを見た裁判官が「地盤が沈下してやしないか…。」とつぶやきました。
恥ずかしながら、代理人はそれまで地盤沈下は全く考慮していませんでしたが、裁判官のこの一言で、建築士さんに測ってもらったところ、Aさん宅の1階の居間と、2階の居間の真上の部屋を中心に、数センチ南側が低くなっていました。そのために、調整してもドアやふすまが開きにくくなっていたのです。
裁判の中で、検証が行われ、スウェーデン式サウンディング試験※をやったところ、「自沈」。地盤沈下の原因は、建築業者が土地にL字鋼を埋め込むために土地を掘削したあとの突き固め不足と、土砂の流出と推定されました。
Aさんには、地盤改良費用と、自宅の修繕費用の損害賠償が認められました。もちろん、建物収去・土地明渡はみとめられませんでした。
Aさん自身も、地盤沈下には気づいておらず、裁判を起こされたために損害に気付いたというケースでした。
※スウェーデン式サウンディング試験・・・地盤強度を調べる方法