施工業者の皆さまにとっても、建築トラブルは避けたいし、起きてしまった場合には適切迅速に解決するのが賢明です。そのために注意すべきことをまとめてみました。
深刻な紛争の解決を依頼された事例から振り返って考えると、次のようなことを注意されればトラブル発生を予防できたのに、と感じることがあります。
皆さまは、建築のプロです。施主は、一生の住まいを建てられますから、それだけの期待を持っています。皆さまは、持っている最高の技術を用い、最善の誠意を尽くすことが何よりの基本でしょう。
お施主さんとのコミュニケーション不足がトラブルの原因になっていることが多くあります。
建築関係の専門用語はお施主さんには理解できません。専門用語はできるだけ避ける、簡単な図を書いて説明するなどの工夫が必要です。
これと関係して、「これくらいのことは分かっているはず」という思い込みは危険です。建築業者が常識と思っていても、お施主さんには分かっていなかったり、違う意味で理解していることがあります。「基礎」と「土台」とを区別しているお施主さんはどれだけおられるでしょうか。
お施主さんの希望をできるだけかなえてあげたいと思うのが良心的建築業者でしょう。しかし、できないことはできないというのも専門家の責任。特に、「絶対大丈夫です」というような安請け合いは禁物です。後日のトラブルにつながります。
新築住宅の場合には、作成されていることが通常ですが、リフォーム工事の場合、簡単な見積書と平面図だけで工事に入っている例が少なくありません。
そうすると、お施主さんとの間で意思の齟齬(思い違い)がうまれ、「こんなはずじゃなかった」とトラブルになってしまうことになります。
作成された設計図書、見積書も、打ち合わせの過程で変更があれば、修正し、最終的にどのような合意で建築されることになったのかを明確にしておきましょう。
工事途中で、変更が生ずることは普通です。その場合、その部分の訂正図面を作りお施主さんにお渡ししましょう。また、打ち合わせ議事録は作成してこれもお施主さんにお渡ししましょう。
結構多いトラブルが、追加工事費用を支払ってもらえない、というものです。
サービスで行うのか、仕様変更なのか、追加工事なのかを明確にしておいてください。
完成引渡後、お施主さんから、「棚の扉が傾いている」「建具の立て付けが悪い」というような申出があることがあります。ちょっとした調整で済むこともあります。「床鳴りがする」「雨漏りがする」というような申出は、正確に原因をつかまなければなりません。こうした申出に迅速に対応すれば、お施主さんからの信頼を増すことになります。対応がまずいために、苦情がトラブルになり、深刻な裁判に至ってしまうことも少なくありません。
建物建築を専門家である建築業者に依頼するように、トラブルの解決には、法律専門家である弁護士の助力を得ることが、建築業者にとっても必要なことです。早めに相談されれば、深刻化する前によい助言ができる場合があります。
この段階に至れば、法律専門家である弁護士への依頼は不可欠になります。建築に関する基本的知識を有し、建築紛争を取り扱っている弁護士はそれほど多くありません。
名古屋第一法律事務所では、「建築法務部」を立ち上げ、弁護士、事務局員が日々研鑽を重ねています。「建築法務部」は、消費者側からの相談、依頼だけでなく、建築業者の方からの相談、依頼を受け、その権利、法的利益の擁護にためにも活動しています。
この場合も、調停など、そして最終的には民事訴訟という法的手続を執らなければならなくことがあります。
まずは、弁護士に相談し、その見通し、執るべき手段などを見定めておくことをお勧めします。