瑕疵担保履行保険の「直接請求」
住宅を新築し、瑕疵担保履行保険が付けられています。住宅の基礎に重大な欠陥があるのに、工事業者が補修費用を支払ってくれません。直接保険会社に請求できないのでしょうか。
制度がかなり複雑なので、以下、その概要を説明します。
平成21年10月1日以降に新築住宅を引渡した建設業者・宅建業者(ご質問は、新築請負ですので、以下、「建設業者」として説明します)は、「保険の加入」または「保証金の供託」をすることが義務づけられました。これは、「住宅品質確保法」に基づく10年間の瑕疵担保責任を果たすために必要な資力を確保するためです。
対象となる瑕疵(欠陥)は、「構造耐力上主要な部分」「雨水の浸入を防止する部分」についての瑕疵です。
これらの瑕疵のために住宅を建築した方(施主、注文者)が損害を蒙ったときに、建設業者の補修費用などの損害賠償金を保険会社が支払ってくれるという制度です。
原則的には、建設業者が一旦、施主に補修費用などの賠償金を支払い、その後に、建設業者が保険会社から支払を受けるという順序になります。
しかし、建設業者が倒産してしまったというような場合は、建設業者からの補修費用などの賠償金の支払いは見込めません。
そこで、法律では、「建設業者が相当の期間を経過してもなお当該特定住宅建設瑕疵担保責任を履行しないとき」には、施主が直接保険会社に請求できると定めています(これを施主の「直接請求」といいます)。
どういう場合に直接請求できるかについて、国土交通省は、「建設業者が破産等により存在しなくなった場合を含め、建築業者による特定住宅建設瑕疵担保責任の履行がなされない場合」と説明しています。
ところが、保険約款や保険会社の実務では、「倒産」「所在不明」の場合に限定されるようになっています。つまり、施工業者が現在も営業している場合には、直接請求を認めない、という扱いです。
施工業者が瑕疵の存在を争って裁判が長期化している、営業はしているが補修費用などを賠償する資力がない、というような場合、「まず施工業者から支払ってもらえ、保険会社は支払わない」というのでは、瑕疵の損害から施主を守る、というこの保険の趣旨が損なわれます。
そこで、日弁連は、「事業者が倒産したとき」に限らず、「発注者等の最初の請求から1年程度が経過している場合」も法律が定める「建設業者が相当の期間を経過してもなお当該特定住宅建設瑕疵担保責任を履行しないとき」に該当するとの見解を示しています。
現在、当事務所で、この問題を真正面から取り上げて、保険会社に保険金の支払いを求める訴訟を申し立てています。
最初にも書きましたが、この制度は相当複雑です。瑕疵担保履行保険のことでお困りの方は、当事務所(建築法務部)までご相談ください。
※ 瑕疵担保履行保険の仕組みについては、「住宅瑕疵担保責任保険協会」のサイトをご参照ください。