楽しみにしていたテラスがだいなしに
建設予定地は、ひな壇のようになっており、下の道路から4メートルほど上に建築予定地、そこから4メートルほどの擁壁の上に土地があるという形状でした。
敷地からは眺望が開け、依頼者の方は、広いテラスを設置して、そこにイスを置いてよい景色を眺めることを楽しみにしていました。
ところが、出来上がった建物のテラスは1メートルほどしかなくなっていました。 何故そんなことが?
通常、擁壁は上の土地の所有者が築造するのが普通で、擁壁の底板は上の土地側にあるのです(「L型擁壁」といいます)。ですから、擁壁の下側が境界になります。ところがこの土地の擁壁は建設予定地の元所有者が築造したもので境界は擁壁の上でした。この場合、擁壁の底板は下の土地にありました(「逆L型擁壁」といいます)。
この場合、底板の上に基礎を建てることができませんから、基礎を擁壁から離れたところに築造し、そのために建物全体の配置がずれてしまったのです。そのしわ寄せがテラスに及び、テラスが狭くなってしまったのです。
依頼者の方は、基礎を組んでいる途中で位置が違うことに気づき、是正を求めたのですが、建築が進んでしまい、途中で工事を中止させたときには、建物がほとんど出来上がった状態になっていました。
この件では、途中解約による出来高精算をしたのですが、建物位置のズレを相当考慮して解決することになりました。
推測するところ、この建物の設計をした建築士は、現場確認しなかったと思われます。そのため、擁壁が通常のL型擁壁であると思い込んで、建物位置を決定したのでしょう。現地確認して、逆L型擁壁であることを認識していれば、それに添った設計をしたはずです。
施主が設計段階でこのような問題に気づくことはほとんど不可能です。建築士の責任は重大です。