建築紛争あれこれ『空き家特措法改正で固定資産税が6倍!?』
「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下、「空家特措法」)が一部改正されました。この改正で「固定資産税が6倍になる」とまことしやかに言われています。正確なところを説明します。なお、今回の法改正では所有者不明の場合の管理制度など他の部分の改正もなされましたが、ここでは、「固定資産税6倍化」に絞って説明します。
■ 「固定資産税が6倍」の意味とは? ■
土地には固定資産税がかかります。その土地の上に家屋が建っている場合には、特例が適用され最大6分の1に減額されます。家屋がなくなると減額されず標準どおりの固定資産税が課せられます。これが「6倍化」の意味で、 6分の1減額の特例適用がなくなるため、結果として土地(敷地)の固定資産税が6倍になる ということです(建物の固定資産税ではありません)。これは、今回の空家特措法改正によっても変わりません。
■ どこが変わったの? ■
これまでの空家特措法では、「特定危険空家」(その意味の説明は省略)と認定され、改善などの勧告がなされると、特例除外=6倍化される仕組みでした。
今回の改正法で、「管理不全空家」という概念が追加されました。この「管理不全空家」というのは、「放置すれば特定危険空家になってしまうおそれがある空家」、という意味です。特定危険空家の前段階と言えるでしょう。市町村によって、「管理不全空家」と認定され、管理などの勧告がなされると、特例除外=6倍化される、という仕組みが今回の法改正で導入されたのです。特例除外の要件が、 「特定危険空家認定+改善勧告」が「管理不全空家認定+管理勧告」に早められた と考えていただければ結構です。
この説明でもおわかりのように、管理不全空家に認定されることで自動的に土地の固定資産税が6倍になるわけではありません。対象家屋所有者には管理勧告が届きます。この勧告が届くと土地の固定資産税が6倍になることになります。
この改正は、 令和5年12月13日 から施行されています。所有している家屋が空家の方、要注意です。
■ 注意 ■
最後に、「だったら、管理勧告が来るまでほおっておけばいい、」というのは誤りです。管理不全空家は放置すれば特定危険空家になってしまうという意味ですから、既に草が伸び放題、落ち葉が隣の庭に落ちる、屋根瓦が落ちて(台風で飛んで)通行人にケガをさせる(隣家のガラスを割る)など近所迷惑が起きているはず。管理不全空家に認定されたら、いや、認定される前に家屋の管理には万全の注意を払いましょう。